2016-05-21 問題 群論 巡回群 有限群 位数 単位元 可換群 素数
有限群\(G\)の元\(a\)について、\(a^2 = aa\)や\(a^3 = aaa\)のように、\(a\)の\(n\)個の積を\(a^n\)と表すことにします。
有限群\(G\)の任意の元\(a\)に対し要素列\(a, a^2, a^3, a^4, \ldots\)を考えたとき、この中に単位元が存在するといえるでしょうか。次の中から最も適切なものを選んでください。
解答表示
常に存在する。
有限群\(G\)の位数を\(m\)とすると、要素列\(a, a^2, a^3, a^4, \ldots\)の最初の\(m+1\)個の中には、 \[ a^j = a^k \quad\text{かつ}\quad 1 \leqq j < k \leqq m + 1 \] を満たす\(j, k\)が存在します(鳩の巣原理)。
\(a^j = a^k\)の両辺に\(a^j\)の逆元を掛ければ、\(a^{k-j} = e\)を得ます(\(e\)を単位元とする)。
ちなみに、\(1 \leqq k-j \leqq m\)ですので、有限群の位数\(m\)個までの積の範囲で単位元が現れることになります。そして、 \(\{ a, a^2, a^3, \ldots, a^{k-j} \}\)は有限群\(G\)の部分群で、\(a\)によって生成される有限巡回群となります(実際にはこの群の位数は\(k-j\)よりも小さいかもしれません。鳩の巣でダブった要素のうち指数の差が最小のものをとると言ってなかったので)。
「鳩の巣原理」は『数学ガール/フェルマーの最終定理』や『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』にも出てきましたね。
2016-05-21 問題 群論 巡回群 有限群 位数 単位元 可換群 素数