2019-06-14 問題 加法 減法 整数 集合 演算
整数全体の集合を\(\mathbb Z\)とし、\(S\)を\(\mathbb Z\)の部分集合とします。\(S\)が空集合ではなく、加法と減法で閉じているとき、\(S\)はどんな集合ですか。
\(S\)が\(\mathbb Z\)の部分集合であるとは、\(S\)の任意の要素は\(\mathbb Z\)の要素でもあるということです。
\(S\)が空集合ではないとは、\(S\)が要素を持つということです。
\(S\)が加法と減法で閉じているとは、\(S\)の任意の二要素\(a,b\)に対して、\(a+b\)と\(a-b\)がともに\(S\)の要素であるということです。
解答表示
\(m\)を\(0\)以上の整数とし、\(S\)は、 \[ S = m\mathbb Z \] と表せる集合になります。ただし、\(m\mathbb Z = \{ mn \mid n \in \mathbb Z \}\)とします。
集合\(m\mathbb Z\)は\(0\)を要素として持ちますから、空集合ではありません。
集合\(m\mathbb Z\)の任意の要素は整数なので、\(m\mathbb Z\)は\(\mathbb Z\)の部分集合です。
集合\(m\mathbb Z\)の任意の二要素\(a,b\)は、\(n_1,n_2\)を整数として\(a = mn_1, b = mn_2\)と表せます。 このとき、\(a + b = m(n_1 + n_2), a - b = m(n_1 - n_2)\)で\(n_1+n_2\)と\(n_1-n_2\)はどちらも整数ですから、\(m\mathbb Z\)は加法と減法で閉じています。
したがって、\(m\mathbb Z\)は集合\(S\)として求める条件を満たしています。
逆に、求める条件を満たす集合\(S\)が必ず\(S = m\mathbb Z\)と表せることを示します。
(1)\(S\)の要素が\(0\)のみのとき、\(S = \{0 \} = 0\mathbb Z\)と表せます。
(2)\(S\)が\(0\)以外の要素を持つとき、その中には最小の正の要素が存在しますので、それを\(m\)と置きます。 \(S\)は減法で閉じていますから\(m - m = 0\)も\(S\)の要素です。
\(m+m=2m, m+2m = 3m, \ldots\)と、 \(0-m = -m, 0-2m = -2m, 0-3m = -3m,\ldots\)という計算により、 任意の整数\(n\)に対して\(mn\)も\(S\)の要素になります。 したがって\(m\mathbb Z \subset S\)です。
ここで、\(m\)の整数倍では表せない整数\(c\)が\(S\)の要素に存在すると仮定すると、 \[mk < c < m(k + 1)\] を満たす整数\(k\)が存在することになります。ここから、 \[0 < c - mk < m\] がいえますが、\(c - mk\)は\(m\)より小さい正の整数になり、しかも\(S\)の要素です。 しかし\(m\)は\(S\)で最小の正の整数ですから矛盾。
よって\(S\)の任意の要素は\(m\)の整数倍で表せることになり\(S \subset m\mathbb Z\)です。
したがって、\(S = m\mathbb Z\)が証明できました。
2019-06-14 問題 加法 減法 整数 集合 演算